珍客
- RICOH RICOH
- 2024年12月1日
- 読了時間: 5分
それから…
ラディアは酒場には行かなくなった。
仕事が終わったら直ぐに帰宅する生活になっていた。
酒もゆっくり飲めない処など、行っても楽しくなかったからだ。
なにより大魔王と顔を合わせたくないという気持ちが強かった。
やがて数ヶ月が経ち仕事場の上司からの朝礼で
「本日、魔宮殿から、
大切なお客様がこの商店街に見学と買物に来るようです。
ご無礼のないように!!!!」
…また…根拠もなく見学しに…何しに来るんだか…
声には出さなかったが心で呟いていた。
またAnyeもアイツも来るんだろう…
そう思うとイラっとした顔つきになっていた。
しかし思いもよらない事を店の上司から言われたのだ。
「ラディアさんは必ず出勤してきて。
そのお客様のお相手をするようにと魔宮殿側から言われているから。
ラディアさんが来ないと、店の信用にもかかわる問題になる。頼んだよ」
「…はい…分かりました…」
上手く話を持ってきたものだと引きつりながら渋々答えた。
奴らの事だ。このことを断れば店側の責任となり、
上司も命がどうなることか…
それも来る直前に伝えて逃げられないようにするとは…
(もういいや。たとえAnyeが居ようが大魔王が居ようが
無視して接客すればいい。)
気持ちを切り替えて『魔宮殿からのお客様』を迎える準備をした。
………
「へ~!!!ここがシオリに載っていた商店街かぁ・・・」
真っ黒い短髪の女性が目を輝かせキョロキョロしている
「過去も未来も、この界隈は美味しそうな物ばかりですね」
キョロキョロしている子の横で微笑みながら話かけている女性…。
ふんわりした感じがなんとなくAnyeに似ている。
その他、男性が3名、サングラスを掛け目元が分からないように…
悪魔だか天界の者が一緒に歩いている。
「ダイヤ、良いか?リリエルと一緒に迷うなよ?」
オールバックにしている男性が釘を指すように言った
「は~い…多分大丈夫…かな?」
「迷ったらお前だけ置いてくからな💢覚悟しとけよ!」
「だったら閣下も一緒にくればいいじゃ~ん!!
てか、置いていくな!!(;゚Д゚)」
どすの効いたの声で言い聞かせてる男性に
ダイヤは全く気にもせず、平気で言い返している。
「吾輩はウエスターレンと行く用事があるのだ!」
「おや?私は自由に動いても良いのだな?」
ニコニコして綺麗な美男子が微笑んでいる。
皆そろって好き勝手に言いながらも盛り上がっている。
なんのこっちゃ…
ラディアは細い目で集団を見つめていた。
魔宮殿からの客?何だか身構えちゃったけど…
大した奴らではなさそうで、ラディアは安心していた。
それに大魔王やAnyeも居ない。ホッとしていた。
だがその時、ふと視線を感じた。
「………………」
黒髪の女性がジッと見つめていた。
ラディアは不思議そうに首を傾げたが…
「ダイヤ!!!置いてくぞ!」
美男子の横に居る男性が言った
「…ねぇ閣下、提案があるのですが…ここで自由行動にしません?」
「…ダイヤがそうしたいと言うなら私は問題ないが?」
クスクスと微笑みながら黒髪の短髪の女性を引き寄せる美男子
「陛下がそう仰るのであれば…」
サングラスの男性も呆れ顔で許可をする。
「…あの…閣下、相談が…」
彼女は耳元で何かを伝えている。
横から脇から全員で耳を澄まして聞いている。
数秒後…
「ダイヤ、終わったら魔法陣で私の場所までおいで」
黒髪の短髪の女性だけを残して、残りの4名は魔法陣で姿を消していった。
その場に残ったダイヤは、
再びシオリを見ながらキョロキョロしながら歩き
色んなお店に入っては見学や買い物をしていた。
そして……ラディアの居る店にやって来たのだ。
「いらっしゃいませ!お持ちしておりました!」
ラディアの上司が頭を下げ出迎える。
横でラディアも一緒になり頭を下げた
「こんにちは!お忙しい処お邪魔します!色々商品があるんですね~!」
ダイヤは気さくに声をかけ、お店を見て回った。
「どうぞごゆっくりお買い物をお楽しみください。
何かありましたら何なりとお申し付けください。」
上司は畏まって会釈する。
ダイヤはご機嫌に商品を眺めては手に取り、
近くの店員に商品について聞いている。
「…フェアリーでもなければ悪魔でもない…
魔女でもなさそうだし…店長、あの方は?魔宮殿から来たお客???」
遠目に見ながらラディアは上司に聞いた。
「どうやら、未来の大魔王陛下のお后らしい。
見立ても普通なのだけど…( ̄∇ ̄;)」
明らかに営業スマイルを浮かべ、ハッハッハと笑う上司…
「はぁ?后????全くそうには見えんのだけど…?」
ラディアは驚いてマジマジとダイヤを見ていた。
髪の毛はウニのようにツンツンしてるし、お后には全く見えない
そこら辺にいるような服装…
しかも、女性っていうより、男性じみた服装だった
それに…未来とはいえ、『あの』大魔王の后???
他者の好みについて、とやかく言うつもりはないが
それでも、やっぱりよく分からない。
后となる相手は、普通は名家の貴族で女性らしく
活発な行動などしないはず…
それも単独で行動するなど、ありえないんじゃない?と驚きを隠せない。
「あの…すみませ~ん、聞きたいことが…」
ダイヤはラディアを見て言った。
第二章 Fin.



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