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episode 2

  • 執筆者の写真: RICOH RICOH
    RICOH RICOH
  • 1月2日
  • 読了時間: 4分

表向きは普通の女子高生でありながら、

異世界の夫、聖への恋心を自覚する絵里奈は

県境に通う人間の高校生など歯牙にもかけない


彼女の持ち前の明るさは、内に秘める無償の愛によるもので

心定まった相手には一途に、また健気に尽くすが

恋愛対象には成り得ないと判断した世界では

冷静かつ論理的に物事を捉え、自己にとって必要な事柄だけを

拾い上げ、それ以外は容赦なく切り捨てる


彼女の視野に入らなかった憐れな者たちは

現像すら覚束なく、言葉を交わす事すら許されない


無償の愛のメーターが、ほぼ、ゼロに等しくなる環境では

非常にサバサバで、どちらかというと男勝りなキャラに変貌するのだ


…だからといって、侮るなかれ。


躊躇いなく物事をズバズバと仕分けしていく様は、ハンサムとすら感じる。

そんな彼女も、異性を刺激する魅力に溢れているし

同性にも、他人に媚びない絵里奈の潔さと姿勢に

「怖いけど、好き♪」と言わせる程度の器量は兼ね備えているのだ


声をかけられ、誘われる事は日常茶飯事で

空気を読めないドМキャラの後輩、陽太《ようた》からは

毎日のように執拗に迫られる


頼んでもないのにバス停まで見送りに来て、バスに乗るまで付き合う陽太


「絵里奈先輩…次のバスが来るまで、上の公園で話しませんか?」


高校の校舎は小高い山の中腹にあり、バス停は下部。

山の上部には、こじんまりとした公園がある




何度も言うが、無防備かつ無頓着な絵里奈

その陽太の誘いに、特に警戒することもなくついていく


日はすっかり暮れて、上部にある公園は風通しも良く

ひんやりとしている


陽太はちゃっかりと、ベンチに座る絵里奈の隣を陣取り

少しずつ、その距離を縮めていく


「…ねえ…寒くない?…そろそろバスも来るよね」


両腕をさすりながら時計を確認する絵里奈の肩を抱き寄せ

「こうすれば、寒くなくなります。もう少しだけ…お願いします」


「…ん~…でも、やっぱり帰りたい。寒いよ…」


絵里奈は陽太の手を振りほどき、ベンチから立ち上がると

元来た道を引き返そうとする

その時


慌てて追い縋る陽太が絵里奈の肩をつかみ、無理やり振り向かせる


「!…(あ…////)」


陽太の行動に驚いて振り返った瞬間、あることに気づいて目を瞠る絵里奈

傍目には、キョトンと首を傾げているだけに見える彼女のあどけない表情に

苛まれる敗北感


「////…い、いえ…すみません…何でもないです…帰りましょう💦」


本当は無理やりにでもキスしたい…

そう目論んでいたのだが、どうにか踏みとどまった陽太は

真っ赤な顔で俯いたまま、その後は一言も話さなかった




さて


陽太は、絵里奈がバスに乗るまで見送り、自宅へ帰って行く

絵里奈は、すぐ次のバス停で降りて、反対側のルートから

先程の山の上部に戻って行く


「………聖さま………」


公園の樹木に寄りかかる、黒ずくめの男に呼びかける絵里奈


「…寒そうだな」


館にいると忘れがちになるが、やはり絵里奈は人間。

悪魔の自分との違いを思い知らされる

本来であれば、彼女自身の時間を奪うより、のびやかに

自由を謳歌させるべきなのだ


だが、あまりにも無防備な絵里奈に堪えきれず

姿を見せてしまった…


寒さに震える絵里奈を抱き寄せ、その表情を隠すように

彼女の肩に額を乗せる聖


「俺がこんなにも、嫉妬するとはな…」


「…あったかいです。聖さま…」


聖の背中に手を回し、ぎゅっと抱きつく絵里奈

先程までの塩対応が見違えるほど、幸せそうに微笑む




絵里奈の肩をつかみ、ゆっくりと撫でながら口唇を重ねる聖

何度も角度を変え、啄みながら、徐々に深くなっていく


「…んはぁ…ん……んん…//////」


堪らず漏れる吐息に、隅々まで喰らい付きたい衝動にかられる

だが、さすがに、この場所では条件が悪すぎる

絵里奈と口唇を重ねたまま、瞬間移動で立ち去る…







翌日


絵里奈は高熱を出し、高校を欠席した

意外にも数日間、寝たきりとなってしまった


館の母屋で甲斐甲斐しく世話を焼きながら

聖は物凄くご満悦な様子


もしかしたら…風邪はすぐに治まり、その後は扉消しのお仕置きを

受けていたのかもしれない(笑)


さて


数日が経ち、ようやく快復した絵里奈は高校に行く

毎日のように教室を尋ねていた陽太は、絵里奈の姿を見るなり

手を取り、廊下に連れ出していく


「…ちょっと…なに?…どした?」


呆気に取られ、問いかける絵里奈に、陽太はようやく手を離し

見つめ合う…のではなく、冷たい廊下に座り込み、土下座する


「絵里奈先輩…ごめんなさい…僕の軽率な行為のせいで…

しかも、煮え切らなかった僕のせいで、大好きな絵里奈先輩に

風邪ひかせてしまうなんて…💦💦」


「え…?…あ…そーいや、そうだったね。でも…たぶん、

君のせいじゃないと思うの…気にしないでいいよ」


聖と濃密に過ごした影響で、その直前にあった事の発端など

すっかり忘れかけていた絵里奈は、またしても挙動不審な

相手の行為に面食らいながらも、謝罪は受け入れる


(…聖さまを…悲しませてしまったもの…)


これが、ドМ後輩、陽太による土下座事件だ



🌷episode 2 Fin.🌷




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丸太小屋の階段を降りると辿り着く桜の木
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