キッチンカー
- RICOH RICOH
- 2024年12月1日
- 読了時間: 4分
数日後、朝から食堂の中はふんわりとした香りが充満している
「咲音ちゃん、朝から何作ってるん?
パン!?金髪の兄ちゃんの為に?…愛やなぁ~💕」
「うん…クラムチャウダー入りのね💕
実は、お米よりパンの方が好まれるそうなのよ…(*´艸`*)」
咲音の健気な様子に、響子も笑顔になる
「私にもちょっとちょうだいね♪」
「お!美味そう~💕拓海!向こうで一緒に食おうぜ」
早速現れ、嬉々としてテーブル席に運んでいく亮
咲音がクラムチャウダーを作ってる横で、
寸胴鍋で豚汁を作る響子
「ちょっと❗️豚汁も食べてや…😢
あ、角の兄ちゃん。はい、丼に豚汁よそったから食べて」
「ありがとね。この豚汁も持って行ってあげる💕
おーい、拓海。これも。サービスだってよ💕」
静哉の心遣いに、歓喜にむせび泣く響子
食べ終わった食器を下げに来て、響子の目の前に立つ拓海
照れくさそうに頭を掻き上げながら、ボソッと呟く
「あ、ありがとね💕」
無言で抱きしめる響子
スタジオ―
2枚目のアルバム制作に取り掛かる為、
曲作り合宿のスケジュールが組まれていた
「…ふう」
フロアにあるソファに座り込み、ため息をつく
「どうした亮。さっきの打ち合わせの事で、何か問題があるのか?」
目敏く気づいた一樹が当然のように隣に座り
声をかける
「まさかとは思ったが…引っ越しと合宿を
同じ日にブッキングするとはな…」
「ああ~…亮、ごめん。その事なら何度も謝ってるじゃない💦
大丈夫よ。新居の方は、事務所の人間がやっておくから」
亮のボヤキを聞き咎め、慌ててフォローする薔子
「まあ、仕方ないよな。家具一式は元から完備されてるんだし
煩雑な事務手続なら、事務所の人間に任せた方がラクだろ?」
逆立てない黄金のサラサラな髪を撫でて、慰める一樹にも
亮は腑に落ちない様子だ
「俺には、プライベートな空間など許されない。そういう事だな?」
「…もう…そうやって、人を監視カメラのように言わないで💢
初日だけだから💢💢」
いい加減苛立つ薔子に、盛大にため息をつく亮
「それにしても…今回の合宿は長丁場になるな。
飯…食えなくなるな…」
ボソッと呟く亮の言葉に、薔子は目を丸くする
「えっ…亮、今何て?…まさか、アンタの口から
『飯』って単語が出てくるとは…」
「…ああ、ここ最近、割とちゃんと食ってるんだよ。
不思議と習慣づいてくるもんだな。ないとなると
何か、物足りなくてな」
「…へえ…咲音のやつ…ついに王子の胃袋を掴んだか♪」
紫煙を燻らせ、ニヤニヤ笑う一樹に
亮は照れくさそうな表情を浮かべる
「お…お前が忙しくなって、暇になった時だけだぞ…//////」
「まあまあ、隠すなって♪俺は別に、同担でも構わんぞ♪
俺も、あいつとなら良いかなって思ってたし(笑)」
「………」
ふざけ合う亮と一樹のやり取りを目の前にして
引きつり、複雑な表情を浮かべる薔子
「ふ~む…」
食堂のテーブル席で、メニューを考案しながら
肩肘を付き、ぼんやりと考え込む響子
「…響子さん?…どうかしたの?」
「えっ…いやあ…まあ、その…ちょっとね」
「?」
2人分の湯飲みをテーブルに置いて、
不思議そうに首を傾げる咲音
今はランチタイムを終えて、束の間の休息時間だ
「私はこう見えて、彼らとの時間を共有している事に
誇りを感じているんよ。あの兄ちゃんたち、皆、カッコいいしな。
だからこそ…こう…なんていうかさ…」
「響子さん?」
「あの兄ちゃんたちのお腹が満たされるように
いつでも力を尽くしたい。ハッキリ言って、
この店を続けているのも、それが理由だからね。」
「…うん…私も本当に、そう思ってる。ほんの少しでも
亮さんたちの役に立てるなら、それだけで嬉しいから…」
「…咲音ちゃん。あんた本当に良い娘やね。
可愛くって仕方ない筈だよ。金髪の兄ちゃんもさ♪
だから、もどかしいねん。私らが関われるのは、
彼らがこの町に戻ってきてくれる、
ほんの僅かな時間だけってのがね…」
「…そうだね…そうだ、来週からまた、
曲作り合宿って言ってましたね。
買い込む食材の量も減らさないと…」
お茶をひと口、飲みながら
店の売上台帳を確認し始める咲音
「…アカン。絶対にアカンわ💢咲音ちゃん。
こうなったら、今までの常識は全部、無視したろ。
彼らを待つのは、もうお終いや!!」
驚いて見つめる咲音に、鼻息荒く宣言する響子
「私らが、彼らを追いかけるんよ♪
どこまでだって行ってやろ!!咲音ちゃん、
追いかけっこは好きやろ?」
「…!…」
ニンマリと笑う響子に、咲音は目を輝かせる
「そ…そうとなったら、急いで準備しなきゃ💦
今からレンタルできるキッチンカーの手配と
…食材は現地で良いかな💦」
慌てて行動を起こす咲音に、満足気に頷く響子…
第三章 Fin.



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