Ⅲ リリエルと咲音
- RICOH RICOH
- 2024年12月24日
- 読了時間: 5分
ノックをすると、扉が開き
中から顔を覗かせる花
「はい…あ。蓮さん」
「よぉ。久しぶりだな。…どうした、珍しくご機嫌ななめだって?」
ニヤッと笑いかける蓮
「…すみません💦 どうしても気になってしまって…
咲音さん、ごめんなさいね」
「あ、いえ。大丈夫ですよ(*^^*) 」
笑顔を浮かべ、視線を向けた先にいる
花にそっくりの女性と、他とは違うオーラを纏う男性
金髪をゆるやかに巻いて、穏やかに笑みを浮かべている
「あ…もしかして、リリエル様…ですね?
先日、御一緒させていただきました」
「はい。咲音さんですよね?」
事情を知るリリエルは、興味津々に眺めている
「やっぱり、若いっていいなぁ……///」
「…!…な、なに言ってるんですか💦」
「そうですよぉ~御髪も肌も艶々じゃないですか💢」
慌てふためく咲音に被さるように
ぷぅと頬を膨らませる花
リリエルの隣にいる男性が盛大に笑う
「ワハハ…(笑)Anyeも十分綺麗だと思うけどなあ
よる年波には勝てないか(笑)」
「!…も、もう…閣下ったら…///」
真っ赤になって俯き、口を尖らせるリリエルの髪を
撫でながら笑っている男性に、咲音は首を傾げる
「…Anye?」
「ああ、混乱させたな。すまない。吾輩はイザマーレだ。
普段はイザムって呼んでいいぞ」
「イザム様…ですか…じゃ、イザム閣下…で良いですか?」
「(笑)そう呼びたいなら、好きにしろ」
「…//////」
ニヤッとほくそ笑むイザマーレを、戸惑いがちに見つめる咲音
「咲音さん、いつもありがとう。
じゃ、私たちもランチに行きましょうか。光さんは…」
そう言いながらドアを開け、フロアを探す花
「そうだな。実は吾輩、光に頼まれごとをしているんだが…
倉ちゃんが来てからで良いか。リリエル、行こうか。
咲音ちゃん?君のランチを御馳走になって良いかな?」
「!…あ、は、はいっ…」
イザムに言われ、シャキッと返事をする咲音
「咲音ちゃん、おかえり!…って、
ぎょうさん連れて帰って来たな(苦笑)」
元気よく出迎えながら、呆気にとられる響子
楽屋口からキッチンカーに戻ってきた咲音の後ろに
光と花、そして花によく似た女性と、光によく似た男性
周囲を圧倒するオーラに、響子は思わず目を瞠る
「響子さん、お留守番ありがとう。紹介するわね。
こちらはイザム閣下とリリエル様です」
「…!…あ…は、はじめまして…」
反射的に姿勢を正し、お辞儀をする響子
「こんにちは…貴女が、響子様ね?
リリエルと申します。おすすめのランチセットを4つ
…あ、レン様はどうなさるのかしら…」
「あいつは、今は降りてこれない。代わりに蓮がいるからな。
だが…やはり倉ちゃん来てからにするか?」
注文の途中で確認するリリエルに答えながら
光と目配せするイザム
「そうだな。今は4つでいいだろ」
「じゃ、4つ。お願いします♪♪」
光に言われ、改めて注文するリリエル
「了解しました♪」
揚げ上がったばかりのサクサクコロッケと一緒に
詰め合わせていく響子
「咲音ちゃん、あんちゃんたちはどうだった?」
4つ分のランチセットが出来上がり、
キッチンカーの前にテーブルに座って
光たちは各々食べ始めている
ミニおにぎりを頬張り、幸せそうに微笑むリリエルと花
彼女たちを優しく見守るイザムと光
その様子を見遣りながら、響子が声をかけた
「うん、いつも通り、素敵だったよ。本番も楽しみ♪♪…だけど…」
ミニおにぎりの補充をしながら、少し表情を曇らせる咲音
「ん?…どした?」
「…楽屋の入口で、偶然お見かけしたの。
こんな所で再会するなんて思わなくて…」
やや俯きがちにため息を零す咲音
「ん?…再会って…誰に?」
「…庵野 寛子さん」
「…庵野…あ、あの…さとえちゃんの葬儀で大騒ぎなさったっていう?」
ぼんやりと思い返す響子に咲音は頷く
「…なんでまた…最悪やね💦」
「あの人、芸能関係の仕事もしてるみたい。良く知らないけど
女優さん?連れて来てた」
「へええ…芸能事務所までやっとるんや…ま、金だけは有り余っとるって事か」
「そうみたい。…でね。今度、亮さんが出るドラマ、あるじゃない?」
「ああ…うん。店で台本見てたやつ?」
「そのドラマで亮さんの相手役になるみたい。お人形さんみたいで
すっごく可愛かったの♪」
「そうなんや…それで、わざわざライブ会場まで挨拶回りって事か。
そういった付き合いもあるから、大変だろうね」
「私…やっぱりあの人は苦手💦 会うと必ずイラっとして
喧嘩腰になっちゃうの(^-^;」
バツが悪そうに苦笑する咲音
「あ…このコロッケ、本当に美味しい☆彡おにぎりも…さすがね~」
幸せに頬張りながら、にこにこしているリリエル
彼女の笑顔を見ていると、自然と心が穏やかになる
光にも似た安心感に、ホッとしてお茶を飲んでいる花
イザムは梅おにぎりをパクリと口に入れ、モグモグしながらほくそ笑む
(…思ったとおり、リリエル。お前の味だな…)
イザムの心の声を聞き、光も目配せしながら微笑んでいる
「…花ちゃん?」
何となく、元気のない花の様子に気づいたリリエルが声をかける
「リリエル様…リリエル様も長い間、人間界でお過ごしだったと思います。
私もこれまで、フェアリー国や魔界や……色々経験しましたが
何というか…」
「…?」
「どす黒い感情のオーラに、時折、目を背けたくなります…」
俯き、困ったような表情を浮かべる花
「そうか…Anyeはオーラを感じ取る能力に長けているからな。」
「あ…そうですよね。確かに、醜いこと、目を背けたい事
そんな事ばかりよね…この世界は(苦笑)」
イザムの言葉にリリエルも頷き、ふぅっと息を吐く
「Anye、お前の感覚は間違っていない。
人間は皆、愚かで勝手な知的生物にすぎないからな。」
リリエルの髪を撫でながら、イザムは花を励ますように語る
「…さっき楽屋で、庵野 寛子に紹介されたあの娘ですが…」
花はますます眉間に皺をよせ、暗い表情を見せる
「表情のないアンドロイド…さとえさんと同じような背景が見えました
何故このタイミングで配役を差し替えたのか…」
「…やはり、花もそう思うか?」
「光さん…この仕事、どうしても受けなければなりませんか?」
光に問いかける花の視線の先には、キッチンカーで
楽しそうに接客しながらランチセットを作り続ける咲音
「…なるほどな」
「閣下…」
2人の会話を聞き、花の脳裏に渦巻く不安を読み取ったイザムは
不安そうに見つめるリリエルの髪を撫でて微笑む
「リリエル、心配するな。あいつらだぞ?ここはひとつ、高みの見物だな♪」
第三章 Fin.
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