復活の狼煙
- RICOH RICOH
- 2024年12月1日
- 読了時間: 4分
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……………
……
魔界の森の奥深く
大魔王クラスの者しか中に入る事を許されない洞窟……
超強力に施された結界の中で
等間隔に鬼火が揺れる
パチパチと火が爆ぜる音と共に
長を務める悪魔が中央に座し、呪を唱え続ける
やがて森に宿る精霊たちが目を覚まし
地底から鳴り響くカウント……
10…9……6……3…2…
ゼロに到達した時、闇と静寂に包まれた森が
眩い光に満ち溢れ、主の帰還を彷彿とさせる
黒装束を身に纏う従者が一様に跪き、棺桶に手を翳す
「……」
目を覚ました瞬間、
自身に起きた変化に否応なし気づかされる
…70年か…
ふと、隣で眠ったままの存在に目を向け、静かに微笑む
人間として70年を共に過ごし
昨夜、寝入るまでは、お互いに年老いた姿だったが
今、そこに居るのは紛れもなく、在りし日の美しい姿…
命のリミットが切られ、魔界に召還されるまでの間に
元の姿に変化していたのだ
「Anye…」
その頬に手を添え、口唇を重ねるイザマーレ
凍り付いていた身体が赤みを差し
重い瞼を押し開く
その目に映り込んだのは…
「…会長…?」
「…Anye…」
遠い記憶の中に封印していた、在りし日の
雄々しい副大魔王の姿に目を奪われ
惚けた表情を浮かべるAnyeを抱きしめ、棺を押し開く
「お帰りなさいませ、イザマーレ様…」
長期不在の間、イザマーレに代わり、長を勤め上げた悪魔が
深々と頭を下げ、2魔を出迎える
その悪魔を見て、Anyeは驚いた
「!…あなたは…学園長…」
「Anye様。よくご無事で…あなた方の帰還を、皆
待ち侘びていましたよ」
かつての好々爺の面影のままで、穏やかに笑みを返す悪魔
「…やあ、イザマーレ。Anyeちゃんも、お帰り。」
そこへ、ウエスターレンと共にベルデが姿を現し、にこやかに
声をかける
「首尾よく戻って来たな。人間界で起きた大戦争の際に
火の領主から呼び出されて、一時的に魔界に戻されてからは
お前たちを遠隔操作で守る事に専念したからな…」
「…ウエスターレン…ご苦労だったな」
万感の思いで見つめ合うイザマーレとウエスターレン
「ところで…本体と魂は、復活を遂げたけど
人間としてのリミットを終えた器は、これから少しの間
魂に昇華されるまで、時間に少し猶予がある。
毎度の事だけど、急展開だったよね?何か、希望はあるかな?」
「そうだな…」
ベルデの問い掛けに、ある思いを馳せるイザマーレ
「我々が最期に居た家の近くに、柿の木のある庭があってな。
Anyeが、とても懐かしいオーラを感じると言い出してな…」
イザマーレの言葉を受けて、Anyeも頷く
「あ、はい…実は、時折、草花の声を聞いていたのです。
あの庭には、いつもは姿を隠し、眠り続けたままで
大事な時だけ美しく咲き誇る花があるそうで…」
…まさか………
イザマーレはAnyeを見つめ、問いかける
「…Anye、その花とは…?」
「…百合の花です。あの庭の草花たちが言うには
間もなく蕾を開きそうだ、という事でした。
それを聞いて、ちょっとだけ、楽しみにしていたんですが…」
「!!」
Anyeの言葉にイザマーレは驚き、言葉に詰まる
「…もしかして…」
呆然と呟くベルデの横で、遥か未来の年月を
正確に割り出し、邪眼で透視するウエスターレン
「…!…間違いないようだな」
ウエスターレンの言葉に、改めて遠くを見据えるイザマーレ
「そうか…ベルデ。その時まで、吾輩の器は使い物になるか?」
「…ギリギリかな…」
イザマーレを見つめながら、静かに答えるベルデ
「そうか…。であれば、あいつの為に役立ててもらいたい。
ベルデ、頼めるか?」
「ふう…分かったよ。Anyeちゃんも…なのかな?」
「…Anyeをあいつの横に侍らせるのは
途轍もなく心配だが…人間の姿なら大丈夫だろ(笑)」
「…えっ…//////」
意味深なイザマーレの言葉に、キョトンと首を傾げていたAnye
そして、人間界のとある要塞の中で、
人間として産声を上げたリリエル
過去のイザマーレの器に潜伏し、
ひっそりと見守り続けた未来の大悪魔、イザマーレ
「近所の優しいおじいさん」が旅立つ時
幼いリリエルに別れを告げた、あのおばあさんは…
Anyeだったのだ
第一章 Fin.



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