空転
- RICOH RICOH
- 2月17日
- 読了時間: 4分
予感はあった
その日の夜
部屋で寝ていたルディは、何者かが忍び寄る気配に
目を覚まし、身構えるが成す術もなく
抗う事すら出来ずに連行されていく
豪華絢爛の装飾
ステンドグラスの光に照らされた宮殿
両手足を縛られ、白いワンピース姿で拘束されたルディの元に
ゆっくりと近づく神ゼウス
「…仕方のない子だね…何をやらせても失敗ばかり…」
ゼウスの声に怯えながら、懸命に呪縛を振りほどこうと藻搔く
そんなルディの髪を優しく撫でるゼウス
「…!…////」
「良い子だよ、お前は…私はお前を褒めてやる。
お前の事を愛してやれるのは、私だけなんだよ…」
「…ぜ、ゼウス様…」
思いがけない言葉に、戸惑いを隠せないルディ
「そんな私をがっかりさせるような真似は、してはいけないよ?
分かるね?ルディ…」
「…っ…あ…ああっ…////」
下腹部から精気を送り込まれ、瞬く間に頂点に達したルディの喘ぎ声が響き渡る
この強烈な刺激を、ゼウスは私にだけ授けてくる
あの方は、逆らい続けていたのに、私は…
かつて、女神ユナの天然っぷりに愛想をつかし
迷い込んだ宮殿で、ゼウスに手籠めにされたルディ
それ以来、大きな失敗を繰り返すたび
ゼウスはルディを自身の元へ呼び寄せ、愛を授けてくれる
そのたびに、ルディ自身ではコントロールできない力が
植え付けられていった
(私だって…認めてもらいたい…)
ゼウスに洗脳され、まだ体内に残る熱に
息を整えながら、涙を拭うルディ
ふと、顔を上げる
誰かの視線を感じたのだ
「…?」
不思議に思い、辺りを見回すが誰も居ない
我に返り、ふぅっと息を吐いた途端、身体が重くなり
縛られていた手首に痛みが走る
「うっ…」
吐き気がして、手で口を覆いながら離れへ駆け込む
しばらくして、ようやく落ち着きを取り戻すと
そこは、かつて女神ユナと共に幽閉されていたクリスタルの小屋だった
割れて散乱したままの鏡に映る姿にギョッとする
さっき、感じた視線の持ち主
その目が無数に浮かび上がり、ルディを睨みつけていた…
どうしてあんなにエラそうなんだろう…
いっつも上から目線で、馬鹿にして…
そりゃ、頭も良くて、経験も豊富で…
生き方も考え方も、自分とは全然違うユナ
何度も話したから分かるよ
その内容も、ルディには想像もつかないくらい
いつも凄くて、驚く事ばかりだった
他愛もない事で、イライラして空回りするのは、いつもルディ
どういうわけか、一度も勝てたことがない。ま、勝負じゃないし
勝ちたかったわけじゃないけどね。
そんなユナにも、いろんな悩みがあった事も
聞かせてもらったから知ってる。
でも、今のユナは、どう見ても幸せそうじゃん。
そんなにゆとりがあるんだから、少しは気を遣ってくれって話よ
こっちは毎日、朝から晩まで働いて、それでもギリギリの生活を
維持するだけでやっとなんだよ
そんなに頭がよろしいなら、こっちのイライラだって
分かってくれたって良さそうなもんよ
またこっちの神が、ろくなことしなくてさ…
あれこれ、前にも話したかもしんない
彼女の話につられて、無理やりこっちも、プライベートな事まで
あけっぴろげに話したからさ、それで随分、すっきりさせてもらったんだよね
それにしても、彼女、本当にいろいろあるんだねえ
今日はあっち、昨日はこっち
いったい、毎日どれだけの事をやってんだろうね
…あ、また急に、不思議なことを言い始めた
これが訳わかんないってーの。
何それ。また夢物語な話か…
読んだけどさ、ナニコレ。
え、これもまた、実際にあったことなの??…え????
ふわあああ…すっごいな…
うん。感動したよ…で、こっちの話も聞いてもらおうかな
って、あれ。
前にも聞いたって…?
だからなんで、上から目線なんだよ
こうして、無限ループを繰り返す天の輪ルディ
逃げなければ
反対側に行かなければ
一番望んでいた立場を、用意してあげられたかもしれないのに
だけど、ごめん
私は良くても、私の周りにいる宝物たちに
あなたとの交代は受け入れてもらえない
だから、嫌でも私のそばにいるしかなかったのよ
「もう…良いではないか?」
花園クリスタルで、信人が出してくれた魔鏡を覗いて
想いに耽っていた由奈は、彼の言葉に振り向く
「そもそも、俺たちは天の輪など欲していない」
「……」
やや残念そうに俯く由奈に、髪を撫でて微笑む
「お前の目で見て、確かめて、納得のいく答えは出たか?」
「…信人…////」
抱き寄せられて、恥ずかしそうに呟く由奈
「最初から、由奈。お前がここに居ろ。それだけで良い」
「(´∀`*)ウフフ…おかえりなさい♪由奈おばあちゃま…」
崇生たかおと一緒に訪れていた結愛ゆうあがにっこりと微笑む
「でもさ。また、じーちゃんと追いかけっこしたくなったら
いつでも言ってよ。ばーちゃんたちが進んだ世界は
どれも結構、楽しかったよね♪」
「…うん…そうね…////」
天真爛漫な崇生の言葉に、由奈はこれまでの日々を振り返り
ようやく幸せそうな笑みを浮かべた

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