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Ⅵ 策略

  • 執筆者の写真: RICOH RICOH
    RICOH RICOH
  • 2024年12月14日
  • 読了時間: 4分

翌日も、ダイヤは丸太小屋に訪れる


2度目になると、すっかり我が物顔でタバコに火をつけ、

昨日はなかった灰皿も、魔力で取り寄せ

物語の続きを書き始める


実際、ダイヤが居ると思い込むその丸太小屋には

イザマーレの罠が仕掛けられており

ダイヤにだけは丸太小屋に見えるが、実際は屋敷の敷地内にある小屋だ


大魔王后なんだから、大丈夫…


自分のことなど、手も足も出せず見過ごすだろうと

安く見積もったイザマーレ専属の使用魔たちは、

庭園内に生じた異質なオーラにすぐさま気づく


魔界を統治する大魔王陛下の后だろうが何だろうが

彼らが主とし、誇りを持って仕えるのはイザマーレ副大魔王と

妃のリリエルのみだ


かつて、史上最悪な事件の時、自分たちで永眠の呪いをかけ

その地を守り通したくらいの集団だぞ?


使用魔の中でも最高峰の彼らに、逆らえる者など、ほんの僅かだ。

庭園内で起きる全ての事は専属使用魔たちに判断を任せ

結果のみ報告すれば良いとされている。

もちろん、イザマーレとリリエルの安全な暮らしを第一に考え、

意に背くような事象は命を懸けて全力で取り除く。

そんな職人気質の彼らに、全幅の信頼を置くイザマーレならではの采配だ


小屋は、各方面の下界とも繋がる結界の境目にあるが

保護を強化することもなく、彼らは敢えて知らん顔で放置するだろう


そうすると、こんなことも容易く起きる




ダイヤは小屋に入ると、自分の部屋のように

置いてある布団を敷いて、ドサッと寝っ転がる


いつもなら疲れきって爆睡するのに、今日は何故だか眠れない

焦って寝返りを打つが、1度眠れないと自覚してしまうと

それがストレスになり、どんどん不眠の坩堝に陥る


「…はあ、イライラすんなあ、もう……」


こんな思いをしてるのに、ウエスターレンはまだ何も動かない


…ま、良いけど。どうせ私は魔界のお荷物。

仕事が捗らなくても、ラディアもいるし

リリエルがどうにかしてくれるんでしょ、どうせ…


「…あー!!ダメだ、眠れない💦」


バッチリ目を開けて、ため息をつくダイヤ


その時だった


真っ暗闇の小屋の中で、何故か視線を感じる


いくら目を凝らしても、姿は見えない

でも間違いなく、そこに居る気配……


「…ち…ちょっと…やめてよ……怖っ😱」


震えながら喚き散らすが、その声は闇に消えていく


い…いや………


あまりの恐怖で引きつるダイヤ

ふと、自分の腹に重みを感じる


まさか……い、いや…見ちゃいけない……




そう思ってるのに、視線はどうしてもそちらに向かう


「ひっ!!!!!」


その存在は、ダイヤのすぐ真上に跨り、睨みつけていた

笑顔ではなく、眼光鋭いその表情は、いつもの彼女と全然違う


あまりの事に泡を吹き、ガダガタと震えるダイヤ


『新月よ…あの方をお招きするのに相応しい夜なの…

それなのに…異質なオーラで穢すのは…お前か………?』


耳ではなく、脳内に直接響くような地声に、戦慄が走る


「す………すすすす、すみません💦

ちょっと、場所を借りてるだけで……お邪魔はしません

私の事は、どうか、お気になさらず………💦💦」


『…隠れんぼが好きなのね…クククク

相手が探してくれなければ、永遠に見つけてもらえないのよ……

そうまでして、私のようになりたいの?バッカじゃないの?』


睨みつけたまま、高笑いする彼女の凄みと言ったら…


「……で…出直してきます💦 すみませんでした!!」


慌てて荷物をまとめ、一目散に逃げ帰るダイヤ




数刻後、梅の木に月光が煌めき、イザマーレが姿を見せる


「…どうした?今夜はやけに、楽しそうだな?」

「………」


素知らぬフリで、木の葉を揺らす理恵


『貴方の大事な彼女は…相当、お怒りのようね。こんな所に居て良いの?』


ため息がちに話をする彼女の声に、イザマーレはふっと笑みを浮かべる


「…大丈夫だ。明日の朝には、いつもの笑顔が拝めるだろう♪」


いつも通りの秘密の逢瀬を、星空が見守る…





そんなわけで、副大魔王妃リリエルの機嫌は、早々に治り

屋敷の中は元の穏やかな空気を取り戻していたが

梅園学園のシンボルが強く香る現象に、ちびっ子魔は震え上がり

毎回、尻拭いさせられるソラが我慢の限界を超え

ついにダイヤの出入り禁止をダンケルに頼むまでになった


「私とは、遊んでくれるのだな?」


ソラのおねだりには快く応じる大魔王は

その要求を軽く受け入れる


だいたい、自分の妻が夢遊病のようにうろつき

あろうことか、最愛の忠臣イザマーレに対し

卑劣極まりない行為を積み重ねるダイヤの態度に

ダンケルも怒り心頭なのだ


本来なら、直ちに処刑されてもおかしくはない

そうしないのが最大限の譲歩なのだと…


イザマーレやウエスターレン、ベルデたち構成員やリリエルも、

ダンケルの信念と我慢強さを理解していた

むしろ積極的にダンケルを散歩に誘い、これまで以上に

楽しく過ごそうと持ち掛けるラァードルやセルダ

バサラは自転車まで持ち出し一緒に向かい風を浴びようと

ダンケルを連れ出すまでになった


時には人間界からAnyeや前世イザマーレに付き合わされ、

ラディアまで散歩に参加するようになったのだ


ここまでが、里好がダイヤの原稿を見つけるまでに起きていた

現象の答えだ


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