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Ⅴ 大魔王后が生み出した世界

  • 執筆者の写真: RICOH RICOH
    RICOH RICOH
  • 2024年12月14日
  • 読了時間: 4分

その日、業務の休息時間

いい加減、毎度上司からドヤされ、嫌味を言われながら仕事をするのも

馬鹿らしくなり、ダイヤはフラフラと界隈を歩いていた


普段、自分はあまり足を踏み入れた事のない市場

リリエルは、しょっちゅう買い物に行っているという話だけど…


ふいに訪れた大魔王后に、店先にいる悪魔たちは皆、よそよそしく

よく分からない食材に、たいして興味も惹かれない


だが、少し歩いた先に、一軒の小屋を見つけた


「…へえ…ここがもしかして、噂に聞いた、丸太小屋?」


ダイヤの器から聞かされたことがある

リリエルの器だった人間が住む場所としてイザマーレから特別に

許可されているとか何とか…


落ち着いた雰囲気に魅せられ、中を覗くが、誰も居ない

どうやら里好は留守のようだった


諦めきれず、中を窺っていると、木戸が開いている


「え…鍵かけてないの…?良いのかな。お邪魔しま~す」


一応、遠慮がちに声をかけながら、躊躇なく中に入り込むダイヤ


「…きちんと片付いてて、結構、広いのね…ってか、暑っ!!

かなりの距離歩いたし…」




自分の自室だったら、ベッドの脇に置いてある、

エアーコンディショナーのリモコン。

当たり前のように探すが、見当たらない

(お前の家じゃねーんだよ)


里好は、あまり空調を好まず、自然な感じが好きなのだ

そういう所は、閣下の信者らしい


「…ってか、これ、原稿用紙…?そうか、これでいくつもの

素敵な作品を…へ~え…」


デスクの前に遠慮なく座り込むダイヤ


「まだ、真っ新…なにか、新しい小説でも考えてる途中なのかな?」

そう言いながら、何かに操られたように、ペンを執るダイヤ


「…ってか、灰皿どこ?」

いつの間にか煙草に火をつけ、部屋の中を物色し始める

(お前の家じゃねーんだよ 2)


数分後


「やっべ。こんな時間。仕事に戻らなきゃ…」

書いた原稿をそのままにして、ダイヤはその場を立ち去る


その原稿用紙が里好に見つかり、イザマーレとリリエルに知らされ

怒りを買う事になった…その内容とは…




………………


今日もダンケルは、ダイヤのことなど放置してソラの館に向かっている


おそらく、ラディアも一緒だ


ダンケルにしてみれば、ラディアの反応が新鮮で

また、ラディアを構う事で焼きもちを焼くダイヤを見て楽しいのだろう


冗談じゃない…こっちの身にもなってみろ…


公務も、最近は呼ばれることがかなり減った

ラディアが居るから、大丈夫なのだろう


自分は、プエブロドラドの警備の仕事しかない

今まで以上に、しっかり持ち場に当たるだけだ


本音では、ラディアが邪魔くさく、追い出したい

自分の扱いをもっと考えて欲しいと訴えたい


今までなら、ダイヤの気持ちをダンケルが代弁することで

守ってもらえていた。甘やかされていた。


そのダンケルに、今では飽きられ

一緒に居るのも仕方ないからと、義務のようにしか感じられない…


一度嵌った、負のスパイラルから、どうしても抜け出せないダイヤ




プエブロドラドの警備だけは、一度も穴を開けずに続けているが

それが終わると、イザマーレの屋敷に向かう


フラフラと庭に入り込むダイヤに、使用魔たちは怪訝な顔をするが

相手は大魔王后。さすがに無碍に扱う事は出来ない


誰も使ってないような、小さな物置に入り込み、

勝手に寝泊まりするようになった


様子のおかしい大魔王后に、使用魔たちは声を掛けるが

「…あ、お構いなく。ちょっと疲れたので寝かせてもらいたいだけですから

食事も何も要りません。枕もスリッパも、自分のを持ってますし」


こちらの問い掛けにはほとんど耳を貸さず

魔力で様々な家具を勝手に取り出すと

ゴロンと横になり、爆睡し始めるのだ


一番最初に、異変に気付くのは

ダイヤの直属の上司、ウエスターレンだろう


ダイヤのあまりの急変に、事情を察したウエスターレンなら

ラディアを人間界に追い出し、ダイヤを大切にしろと

ダンケルに言うに決まってる


ラディアは、そこで人間界に追い出され、はい、さようなら


でも、ダイヤは…

すべての事が面倒になり、まともに考える事すら放棄してるので

屋敷の庭に居ついたまま、魔宮殿に戻ろうともしない


誰が何を言っても、耳を貸さないのだ


その後の世界…?

知ったこっちゃない。

イザマーレやリリエルが、いつものように、どうにかしてくれる


………………




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