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追憶

  • 執筆者の写真: RICOH RICOH
    RICOH RICOH
  • 2024年12月1日
  • 読了時間: 3分

追憶…


ウエスターレンが苦しんでいる最中、

相手をさせられていたクローン


Lilyelを想い、自我を失いそうなウエスターレンが

怒りの捌け口とは言え、なんの脈略もない女を

相手にするわけがない


だが…


目も合わせず、暗い表情を浮かべたまま事に至る

その時だけは不思議な感覚を抱いていた


渇望する光と花……

2魔のオーラが常に寄り添っているような……


………

…実は、遥かなる大昔

かつて文化局の森でピクニックをした際に

魔水晶や翼のオーラを感じ取り、目を輝かせていた

百合の花の化身、Anyeの髪の毛を元に

ベルデが作り上げたクローンだった

彼の魔術を駆使した渾身の力作と言える


やがて、クローンは役割を終え、敢え無く時を閉ざし、

ベルデの設えた永久の棺に横たわっていた


そして……10万年後、リリエルが生まれ変わり

ベルデの手で、魂を昇華させた際、あるものを宿した


見事、輪廻を果たし

ミサ会場でリリエルと出会いを果たした彼女




ごちゃごちゃと、乱雑に置かれたガラクタの中から

転がり出た、ひとつの朔…


「…あれ、どこに行ったかと思っていたのに

急に現れたねえ…」


手の平に乗せ、のんびりと微笑むベルデ


……………………

…………


「…えっ…」

ハーブティーを淹れていたベルデは振り返り

背後に佇み、紫煙を燻らせている紅蓮の悪魔を見遣る


「…人間界行きのチケットって…どういう事?」


「なるべく早く、用意してくれ。3枚な。」


「…単なる旅行や、遊覧ではない…そういう事?

ただ人間界に行くだけなら、そんなもの必要ないよね…?」


あくまでも淡々と言いのけるウエスターレンに

目を逸らしながら呟く


「何万年に一度。だが、それが過ぎ去るのは一瞬だ。

その一瞬さえ、回避できればいいんだ。たとえそれが原因で

戻れなくても構わない。」


「…彼女なら…Anyeちゃんならきっと、どんな困難さえ

跳ね返してくれるかも…そう思うんだけど…

それは、イザマーレも承知してることなの?」




広大な魔界の中で眩いオーラを纏い

大魔王陛下に忠誠を誓う唯一の存在


イザマーレが、魔界を捨て、人間界に行くなど…


「…いや、これは、俺だけのアイディアだ。

イザマーレにも、まだ秘密にしている

あいつらに対する、俺なりの謝意だからな」


イザマーレに匹敵するほどの魔力と

一度決めたら梃でも動かない頑固さ


ウエスターレンの性格を嫌という程、理解するベルデ

何を言っても無駄だろう…


そう思いながら、俯き、呟く


「70年」


「…えっ」


「生き血祭りを回避させるなら、魔界では2年ほど。

人間界なら、時空が異なるから…それだけの年数はかかるよ」


「そうか…その程度なら、周囲に左程の疑念も抱かせず

自然にフェイドアウトできるだろう。」


「…………できることなら、戻ってきてよ。

すべてを終えてからでいいからさ。君たちが居ないと…

退屈すぎて眠り癖がついちゃうかも…(笑)」


よっこいしょ、と椅子に腰かけながら、本音を吐露するベルデに

煙草を握りつぶし、八重歯を見せるウエスターレン


「…すまないな。よろしく頼むぞ。」




 
 
 

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