食堂
- RICOH RICOH
- 3月25日
- 読了時間: 5分
カラン♪
「いらっしゃいませ♪好きなとこ座って~」
いつものように元気な響子の声が響き渡る
魔界貴族のメンバーたちは、すでに食事を終え、各々、寛ぎながら
過ごしていた
「日替わりランチ、3つ。よろしく」
レコーディングスタジオでミーティングを済ませ
揃って来店した光と蓮、そして倉橋の3名
亮たちは、手を挙げて視線を送り、会釈する
「そういえば噂を聞いたぞ、亮ちゃん。何やら、大変なようだな(笑)」
咲音からおしぼりを受け取りながら、ニヤッと笑う倉橋
「そ。歴代の伝説的マネージャーを、匡輝と亮の2人して
お手玉し放題(笑)」
追随するように笑い合う光と蓮
「この際、可愛い奥さんに世話してもらうのが一番じゃないか?」
「…でもなあ。咲音ちゃんには、この食堂があるしな。
美味い食事を味わえなくなるのは困るよな」
咲音からお膳を受け取りながら、提案する倉橋に
光はやはり難色を示す
彼らのやり取りを、にこにこと微笑みながら聞いていた咲音
カラン♪
今度は出門 誠と恵の2人が姿を見せる
「あ、いらっしゃ…」
反射的に振り向き、声掛けの途中でふいに口元を手で覆い
慌てて厨房に戻っていく咲音
「…ん、あれ、咲音…?」
娘の様子に、厨房の奥を気にする恵
「恵さん。中に入って。遠慮せんでいいよ。」
響子に言われ、暖簾をくぐり、厨房に入って行く恵
「…咲音…?」
咲音は、蛇口の水で口元をゆすいでいた
そんな娘の行為にピンときた恵
「咲音…あなた、もしかして…?」
「…うん/////今度のお休みに…お母さんのところに行こうと思ってたの」
万感の思いが込み上がり、ぎゅっと咲音を抱きしめる恵
「 やだ、なに遠慮してんの/////おめでとう、咲音!
すぐ誠に診てもらおうよ。呼んでくる!!」
照れくさいのを誤魔化すように、踵を返し店先に戻って行く恵
すれ違いで咲音の元にやってきた亮が驚いた顔をしている
「咲音…ほんとか?」
「あ、亮さん…うん、たぶん…///
お義父様に診ていただいて、確定診断受けたら
報告しようと…思ってたの…///」
「…そうなんだ…ごめん、俺、気づいてなくて…
昨夜も…大丈夫だった?」
そう言って、まだぺったんこのお腹を摩る
「うん…大丈夫。優しくしてくれたし…/////(´∀`*)ウフフ」
気遣う亮の手に自分の手を重ねて微笑む咲音
優しく抱きしめて髪を撫でる
「…おめでとう…咲音。ありがとな」
「///こちらこそ、だよ。ありがとう…」
亮の温もりに、幸せそうに微笑む咲音
そこへ、バタバタと足音が聞こえ、誠と恵がやってきた
「咲音ちゃん!!…本当か!?…」
「…やれやれ。ちっとは気遣ってくれよ(苦笑)」
「ん?なんだ、亮。お前まだ、モタモタしてたのか?
せっかく気を利かせてやったのに(笑)」
ため息をつく亮に、ニヤッと揶揄う誠
後ろで恵もクスクス笑ってる
「ほら亮、何やってんだ。すぐに椅子を用意して
座らせてあげなさい。妊娠初期は無理させちゃダメだ」
誠に促され、丸椅子に腰かける咲音
「確実な事は言えないが…間違いないようだね。
すぐにでも、俺の所に来ること。良いね」
咲音の顔色を目視し、アドバイスしながら
様々な想いが駆け巡る
「…はぁ~…」
感極まり、深いため息を吐く誠
「…誠ったら…(笑)」
背後に寄り添う恵を、つねに愛している誠
自身がその想いを遂げる事はなかったが、
大事に守り抜いた宝にもたらされた、命のめぐり…
「こんなにも…嬉しいんだな…」
「お義父様…」
そんな誠に、咲音も薄っすらと涙を滲ませる
「咲音ちゃん…ほんま?!…やった…やったね!
……この瞬間に立ち会えるなんて…ありがとう…ありがとね…」
咲音が心配で様子を見に来た響子が、両手で口を覆い
自然に涙が溢れ、満面の笑顔で抱きつく
「響子さん…(涙)ありがとうございます…/////
すみません、お店に迷惑かけちゃいます…」
「何言うてんのや、そんなこと、気にしたらあかん。」
「これからの事は分からないけど…」
「先の事は、心配いらんよ。ゆっくり考えれば良いんよ
そうと決まれば、今日はもう店じまいや!」
不安そうに俯く咲音を励まし、バタバタと暖簾を取り下げに行く響子
「…おめでた、だって?へえ…」
様子を察知した倉橋が呟く
「嬉しいねえ。」
「俺たちも便乗させてもらおう。響子ちゃん、お冷のおかわり!
乾杯しようぜ!」
しみじみと呟く和泉に、拓海と碧生が立ち上がり
カウンターに向って呼びかける
「ああ、はいはい♪」
すっかりご機嫌な笑顔になって、お冷を注いで回る響子
「…彼女に臨時でマネジメントを頼む…って線は、なしだな(笑)」
「やはりここも、崩すことが出来ない聖域。サンクチュアリだからな…
ま、今後はこの店も、進化していくことだろう」
味噌汁をすすりながらぼやく光と蓮
「そういや、倉ちゃんは何か、考えてないのか?」
「え?」
「デビューと同時に、妊娠発覚!なんて困るぞ(笑)」
「…ああ……/////」
突然ふられ、多少気恥ずかしそうに鼻を擦る倉橋
「どうかなあ…俺はこれまで、あまり意識してなかった。
やっぱり、俺自身の生い立ちが特殊ってのもあるし…
そういうのって、遺伝するって聞かないか?」
お茶をすすりながら、正直な想いを吐露する
「…ん?」
人間の事情には疎い光と蓮は、揃って首を傾げる
「子供とか、立場とか関係なく、個人としてお互いを愛し合えれば
それで満足だと思ってたんだが…」
「……」
「意外と、小さい子が好きなんだ…百花のやつ
そういうの見ると…ふと、考えなくもないかな(笑)」
「…へえ」
倉橋の脳裏にある風景を感じ取り、ふっと笑みを浮かべる蓮
「…ああ、最近、花とも接触があったようだな。そいつら」
「!…そうなんだ…ってか…/////」
誤魔化しもせず、あっけらかんと話す光に驚きつつ
いとも簡単に透視されていると、薄っすらと気づいてはいたものの
そこまで単刀直入に言われると、げんなりする倉橋だった



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