りんこ、花、さくら、咲く
- RICOH RICOH
- 2025年3月25日
- 読了時間: 4分
更新日:2025年4月26日
数日後
出門クリニックの扉が開き、診察を終えた咲音を見送りに出てきた恵
「じゃ、気をつけてね。何かあったら、遠慮なく言うのよ?」
「うん…ありがとう。お義父様、それじゃ失礼します」
咲音は笑顔で振り返り、中にいる誠にも声をかけると
てくてくと歩き出す
そのまま自宅に戻っても良かったが…すぐ隣にある公園に立ち寄り
ベンチに座ってふぅっと息を吐く
(…3週目だって…/////)
嬉しさと戸惑い、様々な想いが溢れて眩暈しそうになる
両手をそっとお腹に添えて、目を閉じる
(…お母さんはこの時、たったひとりで頑張ろうとしてたのよね…)
義父の誠が語って聞かせてくれた、ちょっと切ない恋物語
自分の前ではどこにでもいそうな、普通の夫婦に見える両親に
とてつもないドラマがあったのだ
「…お嬢さんじゃない。こんな所でどうした?」
「!…あ、新藤さん」
ふいに声を掛けられ、顔を上げると見知った顔に気づく
父親のゼミに居る、新藤 等だった。
「病院に行った帰りで、ちょっと日向ぼっこです♪…新藤さんこそ、どうしたの?」
「出門クリニック?なに。どこか具合でも…?」
心配そうに覗き込んで、咲音の額に手を当てる新藤
「…もう…そうやって、すぐ子ども扱いする~(笑)違うの。実はね…」
わざと口を尖らせ、拗ねたフリをしながら
新藤の耳元で囁く咲音
「!…え、ほんとに!?…てかそれ、良いの?
イケメンの旦那さんや、先生を差し置いて…💦俺が先に聞いちゃって…」
途端に慌てふためいて、挙動がおかしくなる新藤
「クスクス…もう2人とも、とっくに知ってるもん♪」
楽しそうに笑う咲音に、ハッとする新藤
「そ、そっか…そりゃ、そうだよな…(笑)
改めて、おめでとう。無事に元気な赤ちゃん、産んでくれよな」
「うん…ありがとう…」
「おっと、いけね。俺もクリニックに用があったんだ。
先生に頼まれた案件があってね…じゃ、お嬢さん、またね。
気をつけて帰るんだぞ?」
念をこめて言い聞かせる新藤に、朗らかに手を振って見送る咲音
「は~い。新藤さんも、またね」
少しだけ歩いて、タワマンのエントランスに辿り着く
その時、モニュメントになっている噴水の淵に腰かけている人影に気が付いた
「あら…凛子さん?」
「!…あ、咲音ちゃん…今日は食堂、お休み?」
声をかけられ、見上げる凛子。中学生くらいの女の子と
並んで座っていた。
「こんにちは。凛子さんの娘さんかな?」
「もう…困っちゃった…」
「え?」
ほとほと疲れた顔でぼやく凛子に咲音は首を傾げる
「今日はさ、私も休みだったから、この子の行きたい所に
連れてってやろうって思ったら、ここって…仕事で連れて来てる私も悪いんだけどね
うちらのような庶民は、仕事着を脱いで、おいそれと入れるようなハコじゃないって💦」
「…やだ、何言いだすと思ったら…(笑)」
「冗談じゃないって。ホントなんだから~
仕事のパスカードがないと、エレベーターにすら入れないよ?
先日、百花さんに面倒見てもらったからって、花梨も調子乗りすぎ💦」
「クスクス…そうだったのね。それならウチに来てくれれば良かったのに」
「え…てかそれ、ダメダメダメ…/////💦💦」
いろんな事を想像しただけで、顔中真っ赤にして照れる凛子
そんな彼女に肩を竦め、俯く咲音
「…でも、すごいなあ…凛子さん。子育てしながらお仕事続けるって…
やっぱり大変よね…尊敬しちゃう…」
2人が会話してる最中、ずっとエントランス内を窺っていた少女が
突然なにかを発見したように立ち上がり、走り出す
「えっ ちょっと花梨っ だめだよ…こらっ」
慌てて後を追おうとした瞬間、人影に遮られる
「あ、すみません…て、あれ?ひょっとして…作楽さん?」
「蘭パンダ宅配便の、凛子さんだね。先日もお見かけしたの。
今日は、お休みの日なのかな?」
「あ、ええ…」
適当に相槌を返しながら、娘の様子が気が気でない凛子
「ふふ…あとは、あの子たちに任せておけば、大丈夫よ。
きっとまた、あそこに行ったんだね…って、あ…!
あーーー!!あの時聞こえた…あの『ももちゃん』って…
『百花』って人の事?合ってる?」
「…はあ?」
途中から意味不明になっていく頓珍漢な作楽に
あっけにとられ、肩の力が抜けていく凛子
「合ってますよ。」
「…!…」
驚いて振り向くと、花が優雅に微笑んでいた
「あの…貴女は…?」
まじまじと眺めて興味津々に問いかける作楽
「光プロダクションの者です。時折、お見かけしております。」
「…あら!まあ…30階の…?あ、私は…」
差し出された名刺を受け取って微笑む花
「…作楽さん?そう、お呼びしても良いかしら…」
「勿論です♪よろしくお願いします」
作楽はお辞儀すると嬉しそうに立ち去って行く
「ああ、凛子さん。お子様が気になるわね。どうぞ中にお入りになって。
咲音さんも。行きましょ♪」
呆気に取られていた凛子と咲音
花に連れられ、中に進んでいく

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