Prologue
- RICOH RICOH
- 1月2日
- 読了時間: 2分
コール着信となり、モニター画面の左上が黄色く点灯する
「異次元コミュニケーションズの小原です。はい…あ、はい…」
応答しながら画面を操作していく
「Aブロックの三角地帯、ファミリーセブン●▽店ですね。
お待ちください。コードナンバーは…」
……………
「…はい。承りました。失礼いたします」
データを何種類か抽出し、根拠となる資料も
まとめてプリントアウトさせる。
「…これでいっかな…」
独り言ちながら立ち上がり、振り向くと
今まさに呼び出そうとしていた相手が、すぐ後ろに待ち構えていた
「あ、高柳さん…」
「…違ってたって?どういう事かな…」
「はい。少々、厄介な案件ですが、処理は可能な範囲です。
ご説明に伺おうとしていたのですが…あれ、池端さんは…」
中央の座席に視線を向けるが、見当たらない
「…彼はおそらくM社の案件じゃないかな…
いいよ。とりあえず、小原ちゃんの見解を聞かせてよ。」
「承知しました。ではこちらへ…」
デスク島からフリースペースへ移動し
ホワイトボードをセッティングする小原
「…大きくなったねぇ…あまり無理しちゃダメだよ?」
小原の腹を見遣り、高柳が目を細めてニヤつく
「ありがとうございます。でも、大丈夫ですよ。」
毛先のクセを活かし、適度にカールさせたミディアムヘアを耳にかけ
資料を提示しながら朗らかに笑う
小原 由奈《おはら ゆな》は3年前に新卒で採用された若手社員
鳴り物入りで品質保証部に抜擢された彼女
ずば抜けた才能でシステムの根幹を深く理解し
彼女の知識と処理能力は、いまや最高幹部をも凌駕する。
万が一、不測の事態が起きれば、証拠隠滅のために、
その存在ごと真っ先に消される程のレベルだ…というのは
社内のあちこちで、まことしやかに囁かれている噂だ
当の本人は、会社内での立ち位置や、自らのスキルに何の拘りもなく
直属の上司、池端 信人《いけはた のぶと》と
同じ部署に配属された後、すぐに交際を始め
結婚、すぐさま妊娠…
今はちょうど7か月目。
元々、小柄な彼女。妊婦専用のマタニティウェアではなく
普通のLサイズで十分と豪語していたが、
臨月が近づくにつれ、周囲からも頻繁に心配されるほど
でっぱりが目立つようになってきた
仕事だけでなく、プライベートでも話題に事欠かず、
マンネリしがちな職場において、非常に重宝される存在だ
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