Ⅴ コンサートホール
- RICOH RICOH
- 19 時間前
- 読了時間: 5分
受付
もぎりした半券の整理をしつつ、来場者にパンフレットを手渡しながら
人の流れを捌いて行く
ブースの奥には、贈られた祝い花が優雅に飾られている
魔界貴族や匡輝、倉橋勇など、錚々たるメンバーの名前
(…新人ちゃんの割に……すごいねえ)
「桜介。受付ご苦労。」
振り向くと、光プロダクションの会長夫婦が立っていた
「…あ、光さん。いえいえ、こちらこそ
いつも声をかけてくださって、ありがとうございます」
隣にいる花に、改めてパンフレットを手渡す桜介
「この度は、おめでとうございます」
「(´∀`*)ウフフ……桜介さん。本番が始まったら、
是非客席で聴いてあげて頂戴ね」
朗らかに微笑む花に、桜介も釣られて笑顔になる
「あ、はい。勿論ですよ。楽しみにしてますんで!」
丁寧に会釈して、場外の人の流れを見ながら
時計を確認し、ブース内の整理整頓を再開する桜介
「…よお。」
「!…まっさん♪」
待ち望んだ声に、弾けた表情で振り向くと、
その隣にいる存在に笑顔を見せる
「…稀依ちゃんも。いらっしゃい♪」
「桜介さん…/////」
右も左も知らない事だらけで緊張MAXの中
ようやく出会えた既知の人物、桜介を前に
ほっとして弱々しい笑みを浮かべる稀依
「まだ少し、開演まで時間あるよな。
稀依、行こう。ラウンジでドリンク飲める。
コーヒー飲むだろ?」
そう言って、稀依の手をとる匡輝
「積もり積もった話を、聞かせてもらおう。おいで」
「/////は、はい…/////」
普段、タワマンARCADIAのラウンジで逢瀬を重ねている2人
どんな状態になれば、彼女が一番リラックスして寛げるのか
知り尽くしている匡輝ならではの差配だ
傍目に見れば、どう見てもお似合いの2人
(そうだ、今のうちに…)
2人が来たら、稀依に頼みごとをするつもりでいた
本番の数ブロックだけでも、受付を変わってもらおうと
目論んでいたのだ
彼らのいるラウンジに向おうと、受付ブースから出た矢先
新たな客が現れた
「あ!いらっしゃい♪…お久しぶりっすね」
帽子を目深に被り、金髪を控え目に結んでいる亮と
黒いレースのワンピース姿の咲音
「…桜介さん、スーツ姿、決まってますね♪
あとで、響子さんと一緒に交代しますよ。」
「え!でも…悪いっす。咲音さん、無理させるわけには💦」
恐縮しながら手を振り被る桜介
「それより桜介…まっさんはもう来てる?」
「あ、はい。先程……あちらにいますよ」
「光さんによると、どうもまっさん、彼女連れなんじゃないかって」
「気になるよな。俺たちも是非、挨拶しておきたいし」
亮の背後から、次々に訪れる一樹や拓海も、興味津々の様子だ
受付ブースが一段と賑やかになり、その様子に気が付いた稀依が
後ろを振り向いた
「…!…あれ…もしかして、稀依ちゃん?」
視線に気が付いた咲音が、発見して目を丸くする
「さ…咲音…/////」
今日は百花のデビューコンサートだ。
光プロダクションのトップスター、魔界貴族のヴォーカル
金髪王子こと亮の専属マネージャーも務めている彼女
当然、光プロダクションに縁のある面子が揃う事は予想できていた
もしかしたら、その中で、こんな出会いもあるかもと
予測しないこともなかった
だが…咲音ほどの推し愛はなくても、半端ないオーラを解き放つ
彼らの存在を前に、自分の立ち位置を容赦なく認識させられた
(…/////)
真っ赤になって俯く稀依
「稀依…?どうかしたか?……ああ、何だ。あいつらか」
稀依の様子がおかしいのを訝しく思い、振り返った匡輝は
彼らに手を挙げてみせる
「まっさ~ん。先日はどうも~。」
「こちらこそ。身重の奥さんの体調は大丈夫なのか?」
「あ、はい!お陰様で……ありがとうございます♪」
にこやかに会釈する咲音
「それは良かった。あ、紹介するよ。
こちら、小田稀依さん。俺の……」
「!……/////」
ますます真っ赤になり、深々とお辞儀する稀依
やっぱりね~…
噂に聞いてたよ、咲音と同級生だって?
やるねえ♪
その場に居たメンバーが口々に冷やかし合い
喧騒が一気に華やいだ
その最中、匡輝は、先程の自分の台詞の続きを
見出せずにいた
何が最も、相応しい呼称だろうか
女? 彼女? ……妻? いや、まだそれはないな、落ち着け、俺……
一方、紹介された格好の稀依は
匡輝の台詞が脳内再生を繰り返している
…俺の……
「匡輝さん。稀依ちゃんは、私の大切な親友です。
大事にしてあげてくださいね♪」
「!!…ち、ちょっと…咲音…/////」
亮の隣で穏やかに微笑む咲音に、慌てふためく稀依
「ああ…それは勿論。大事にするよ。俺にとっても
大切な存在だからね」
「/////」
もう、いつ死んでも良い…
これまでのすれ違いの日々が走馬灯のように駆け巡る
喧騒はさらに大きくなり、いつの間にか
彼らの輪の中心に取り込まれていく
眩い光の輪から外れ、影となる場所に
終始一貫、静かに佇む存在があった
稀依や匡輝はおろか、亮たち魔界貴族のメンバーも
誰一人、気がつかない
なぜそこに居るのか、誰も知らない
そんな2人が、そっと立ち上がり、その場を離れる
…………
(…着いたぞ。少々、ギリギリになってしまったな)
(はーい♪まだ大丈夫ですよぉ。あ!パンフレット貰ってきますね♪)
ホール出入口付近に現れた影。ゆるくカールした髪に座る女を降ろすと
女は嬉しそうに受付ブースに駆け寄って行く
花によく似ている女性の姿。そして、一緒にいた奥の男性を見遣り
桜介は目を瞠る
桜介から受け取ったパンフレットを手に、嬉しそうに戻って来る
リリエルの髪を撫で、優し気に微笑むイザム
場内の人の流れはある程度、均一に保たれている
不自然な淀みを生むのは、想定外の流れが起きた時
開演直前。ホワイエでもラウンジでも客席でもなく
会場の外に出て行く奇妙な2人
イザマーレの視界にさえも捉えられずに…
コメント