top of page

Ⅱ冷たい雨が…

  • 執筆者の写真: RICOH RICOH
    RICOH RICOH
  • 1月2日
  • 読了時間: 2分

冷たい雨が降りしきる


マーケットで食材を買い込み、片手は傘を差し

もう片方は重い荷物を持つ


なかなか面倒だが、あまりストレスがない


レインコートを羽織って正解。必要以上に体温を奪われず

傘で奏でる雨音を楽しみながら帰宅する


食材を冷蔵庫に仕舞い、押し入れからアイロン台を取り出す


「絵里奈、お帰り。…ん?どうかしたのか?」


「ただいま…うん。このズボン、裾上げしたくてね」


「へえ…珍しいな」


「…これね、母が買ってくれたの。やっぱり捨てられなくて。」


「…あいつが?」


何気ない会話を聞き咎め、聖は不思議そうに首を傾げる

絵里奈は、聖の予想通りの反応が少し可笑しく思う


悪戯っぽく見つめ返して微笑む


「…崇生よ。あの子から時々、聞かされているの。」


「…へえ…」


聖は少しバツが悪そうに視線を泳がせて、ソファに腰かける


「…会いたいか?お前の両親に」




聖の問い掛けに、絵里奈は穏やかな表情のまま、首を横に振る


「私は…今がいちばん、幸せだから」


アイロンがけを済ませ、立ち上がろうとする絵里奈の腕を引き寄せる


すこし、眉尻が垂れて、あどけなさを残す

絵里奈の額に口唇を押し当て、耳朶を甘噛みする


「…ん……//////」


ビクつき、身体を震わせる


感度の良さも、あの頃のままだ


「結愛は…」


「ん?」


「あの子は今日、デートですって。夜は遅いみたい…」


「…へえ~…♪」


事務連絡のような、誘い文句に苦笑しながら彼女をバスルームに誘い

あの頃のように貪り合う


外は相変わらず、冷たい雨

室内に充満する熱気で、白い闇に包まれながら、

お互いの愛に酔いしれる…




コメント


丸太小屋の階段を降りると辿り着く桜の木
bottom of page