Ⅲ 楽屋の談合
- RICOH RICOH
- 2024年12月24日
- 読了時間: 4分
「さて。では早速、本題に入ろうか。
蓮から少し聞いている。実は先程、入れ違いだったようだな」
「えっ…まさか、ここにも?」
イザムの言葉に、倉橋は驚いた
「あれ、百花に聞かなかったのか?」
「…あ、そうか。だからか…」
蓮に言われ、ようやく腑に落ちて独り言ちる倉橋
「んん?」
「いや、俺はてっきり、あんたたちと百花が会ったんだと思ってな…
俺の反応に、百花がヘソを曲げたもんだから…そういう事か。
寛子の事と、勘違いしたんだな」
「………………ほう…」
(自分の事以外で嫉妬した、という事か…)
イザムにとっては羨ましすぎる事象だ
「百花ちゃんだけじゃないんだ。花も、それから亮の彼女も…
リリエルの種、Lillyの輪廻に起源を持つ
彼女たちが皆、庵野 寛子に対し、怒りを顕にする。」
「Anyeも?」
光の指摘に、イザムは初めて怪訝そうに眉を顰める
「そうだ。考えてみてくれ。これがもし、リリエルまで波及したら…」
「……たしかに。リリエルは無償の愛だ。その怒りに抵触したら…
世界は滅びるだろう。我々の力を以てしても、抑えきれるかどうか分からん。
なるほどな。火急的すみやかに処理すべき案件であることは理解した」
イザムは目を瞑って腕を組み、じっくりと考え始めた
「放っておけば、労する事もなく自ら転げ落ちていくだけ。
そんな奴、関わらなければ一生、出会わずに済むだろうになあ。
どういうわけか、絡んでしまったわけだ。しかも何故だか
相手から積極的に近づいてきている…倉ちゃんの疑問はこの事か」
「…!…そうだが…へぇ…すごいな。分かるのか?」
瞬時に、これまでの事象を弾き出したイザムに、倉橋は驚く
「ああ、実はさっき、咲音ちゃんだっけ。
彼女とAnyeの2名と話をしていたからな。
ウエスターレンに頼めば、もっと詳細に分かるだろうが
この程度なら、吾輩だけでも出来るぞ」
半端なくとんでもない事だが、惜し気もなく得意げに笑みを浮かべるイザム
「魔界は安泰か?何か変わった事が起きてないか?」
「安泰って言葉が最も似つかわしくないのが魔界だからな(苦笑)
まあ、それでも、ここ最近は穏やかな方じゃないかな…」
「…これまでは?」
「んん?」
「歴史を紐解いてみてくれ。不可解な出来事はあったか?」
「…それこそ愚問だな(苦笑)。だが、そうだな。心当たりがあるとすれば…」
顎元に手を当て、やや遠くを見据えるイザム
「百合の花、リリの化身であるリリエル。そして、リリエルの前世、Anye。
前副大魔王であったお前と、その妃Anyeに対し、執拗に粘着し
ネガティブキャンペーンを流布させた犯罪魔とその事件なら
よく覚えている。」
「!」
「お前が副大魔王の要職を辞し、再び人間界に降りた直後、
少々、混乱した事態になった。あ、お前らは雷神船で見ていただろ?」
「え、あの時の…てことは…シグナスか」
「あの時、最終的に刑を執行したのは吾輩ではなかったからな。
奴の末裔や残党までも、厳正に処理したのか…
ひょっとすると、多少の手心を加えた可能性は否定できない。
第二、第三の模倣犯が生まれる場合もあるし…」
イザムと光のやり取りを聞きながら、倉橋が口を挟む
「…寛子はたしかに、周囲に軋轢を生むが、
アンタたちの世界のような、悪しき存在ほどではないと思うが…
あいつの行動の入口はいつでも、純粋な善意なんだ」
「…なるほど、そうだろうな。だから、無償の愛とは相容れない。
我々悪魔と天界が理解し合えないのと、類義なのかもしれないな。」
光は改めて、花との馴れ初めや、これまでの日々に思いを馳せ
実感を込めて呟くが、イザムはその横で、不敵な笑みを浮かべる
「…だが倉ちゃん。本当にそうか?そいつの心に一点の曇りもなく
欺瞞がなかったと…そう言えるのか?」
「…厳しいな(苦笑)」
「そうだろう?じゃなければAnyeたちが反発しないはずだ。
ま、そいつに魔界の事件が起因しているのかは、もう少し調べる必要がある。
判明し次第、報せに来る。」
イザムの手厳しい指摘に、倉橋は納得する
「分かった。よろしく頼むな」
「じゃ、今宵のフィナーレも楽しみにしているぞ♪」
頷いて、表情を入れ替えて微笑むイザム
「え、イザムちゃん、入ってくれないの?」
「あ、それについてだが…百花ちゃんに、まだ説明してないだろ?」
ややたじろぐ倉橋に、光と蓮がニヤニヤしている
「倉ちゃん。女の信頼を取り戻すのは、そう簡単じゃないぞ?
ま、御機嫌取りに難航するようなら、手助けしてやらない事もない♪」
そう言い残し、イザムはふっと姿を消す
「あ♪閣下~最高ですよ!!
一樹さんと拓海さんと静哉さんのセッション(≧∇≦)」
姿を現した途端、はしゃいでいるリリエル
「一樹と碧生のコントは終わってしまったか?」
抱き寄せて、耳元で囁くイザム
「Anyeと百花ちゃん。この後、キッチンカーの前で集合な」
「は~い」
イザム(イザマーレ)とリリエルの仲睦まじい様子に、数刻前の不安や
塞ぎがちな感情が洗われたのか、穏やかな表情を浮かべる花と百花だった
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