Ⅷ 魔界時計の数時間前
- RICOH RICOH
- 2024年12月11日
- 読了時間: 3分
長く、無数に続く階段を昇って行く、一名の者
ようやく辿り着き、扉を開けると、そこは広いリビングフロア
屋敷の主が目の前のソファに座り、出迎える
「お待たせいたしました。イザマーレ様…」
恭しくお辞儀をして、挨拶を交わす好々爺
「ランソフ、待っていたぞ。こっちだ」
イザマーレは鷹揚に応え、手招きする
向かった先では、広いダイニングテーブルの上で、資料を広げ
吟味しているリリエルとウエスターレン
「あ…ランソフ。いらっしゃい。」
「リリエル様、ご無沙汰しております」
リリエルは微笑み、お茶を淹れに行く
「これは…また膨大な資料ですね」
「ああ、かの国の舞踏会に行くのは良いが、あいにく
オルビガーノの事以外は、まったく未知の世界なのでな。」
資料の中身は、ウエスターレンが邪眼を駆使して取り寄せた
かの国の要綱だった
「念のためにと思い、事前に調査しておいてよかったぞ。
まさか、こんなルールがまかり通る世界など…」
煙草を咥え、やれやれと目を細めるウエスターレンに
ランソフは不思議に思い、資料を拝借して確認する
「!…なるほど…昨今、地上でも声高に言われるようになった
摩訶不思議なルールが、この世界では原則となっているようですね」
「舞踏会において、男女同伴はNG。受付で、性別を判定され
それぞれのパーティールームに案内される。
宵越しの戯れや、声掛けなど以ての外。
セクシャルハラスメント根絶を標榜に掲げ
間違っても過ちが起こらないよう、安全に気を配っているとの事だ」
「……義理で堅苦しい空間の、唯一の楽しみといっていい
それらを排除し、奴らはいったい何が楽しいのだ?」
全く解せない……
そんな表情で、首を傾げるイザマーレ
「驚くのはそこか?イザマーレ」
ウエスターレンはやや呆れ、八重歯を見せて笑う
「お前、今回もリリエルを同伴させるつもりだったろ?
このままじゃ、同席すら危ういぞ」
「…!…」
「あの…それなら私は、会場の外で待ってますよ。
オルビガーノと一緒に…」
「駄目だ!お前は、吾輩のそばから一ミリも離れるな!!」
「え…だってだって…それじゃ、どうすれば…💦」
イザマーレのあまりの剣幕に、リリエルも思わずタジタジになる
「この国の王とやらは、元々、オルビガーノを愛していたのだろ?
それならば、吾輩が姿を現してやるのが一番だろ。
ウエスターレン…お前にエスコートを頼むのも…駄目なのか?」
最後は気恥ずかしそうに俯き、少しだけ声も小さくなるイザマーレ
「(笑)…いや、さすがに各国の貴賓を招く公式行事だからな。
SPの帯同を許可するのは、暗黙のルールだ。
たとえ、ルールがなかったとしても、お前を守るのは、俺様の役目だ」
腰を抱き寄せ、見つめ合い
不敵な笑みで目配せするウエスターレンとイザマーレ
「…ということであれば…今回はイザマーレ様を美しく飾り立てるための
ご衣裳でございますな。リリエル様は、イザマーレ様の麗しい御髪を
さらに引き立てる為の髪飾り…整いましたな♪」
「…♪」
久しぶりに、仲睦まじいイザマーレとウエスターレンの様子を
公式に思う存分眺められる…
嬉しそうに微笑み、ワクワクを隠せないリリエルと
満足そうに頷くランソフだった
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