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  • 執筆者の写真: RICOH RICOH
    RICOH RICOH
  • 2024年12月10日
  • 読了時間: 4分

週末


サエはその日の服装選びに悩み尽くして、

360度回転した挙句、極力いつもの恰好で待ち合わせした駅に向かう


雑踏の中、改札のそばに立つ相手の姿を発見して

思わず顔を赤らめる


黒地にシンプルなロゴがあしらわれたスウェットパンツに

真っ白なTシャツ、パーカーの袖をまくり、腕を組んでいる


ラフな格好なのに、シルエットが様になり

ものすごくカッコいい。


近寄るサエに気づき、爽やかな笑顔を見せる


「お。やっと来たな。」


「…お、お待たせしました💦」


おずおずと緊張した面持ちでいるサエ


「…プッ…なんだ、急に畏まって。ま、いいや。行くぞ」


そう言って歩き出す等の後を、慌ててついて行く


「ま、待って…えと…行くのはいいけど、どこへ?」


「そうだな。お前、何だかんだ言って、まだ病み上がりだろ?

あまり無理はできないし」


そう言いながら、歩を止める事もなく、ずんずんと進んで行く等




目的地はすぐ傍のビルだった


再び振り向き、辺りを興味津々に眺めるサエに

ニヤッと笑いかける


「ベタなデートの手順どおり、映画なんてどうだ?」


「…!!…」


軽妙な等の誘い文句にも関わらず、サエはそれ以上に驚いていた


生まれつき身体が弱く、入退院を繰り返していたサエ

そんな彼女の唯一の趣味は、読書だった

等と同部屋で入院していた時も、ベッドの上で繰り返し

読み耽っていた


数日前に、その小説が映画化されたことは知っていた

見に行きたいな…と、漠然と思っていたのだ


たった、それだけの情報をヒントに

サエが一番喜ぶ事を考え出し、すぐに実行に移す等に

改めて感心する


そういえば…入院してた時も、いつのまにか

自分の検査スケジュールを把握してくれて、

自然とアドバイスしてくれていた


凄いや…


「どうした?疲れたか?」


ぼんやりしていたサエをさり気なく気遣い

優しく声をかける等




「ほら。ブランケット持ってきてやった。

お前、意外と薄着だよな。上映中は空調が効いて

結構冷えるから、掛けとけ」


「!…あ、ありがとう…//////さすがだね」


「ん?」


隣のシートに座り、コーラを飲む等が

不思議そうにサエを見る


「恋愛上級者っていうの?凄いね…

でもなんか、分かった気がする。」


「え?」


「…恵ちゃんが、等くんのことを好きになる気持ち。

それだけじゃなくて、他の女の子たちも、皆が等くんに惚れる気持ち」


「………」


「私は、一日限りのオマケみたいなものよね(笑)だけど…

うん。なんか、得した感じ。すごく楽しいし、誘ってもらえて嬉しいな」


「…それは良かった。ほら、もうすぐ始まるぞ。

お前の見たかった映画だろ?集中して楽しめ」



数時間後、レストランで食事をする2人


お洒落な雰囲気と甘いお酒の味に、サエは酔いしれていた

恵や誠の話をしたり、映画の話をしながら、自然と2人の距離が縮まり

いつの間にか手を握り合っていた




食事も終わり、待ち合わせた駅に戻ってきたが

繋いだ手の温もりが暖かく、離れがたい気持ちになっていたサエ


いつの間にか、サエが女の目で自分を見つめている事に

少し前から気づいていた


(一日限り、とは言ったが…ま、いいか。今日という日は

まだ終わってないしな…)


サエの手を握りしめたまま、無言で駅を通り過ぎ、

自宅に向かう等


ドアを開け、部屋に連れ込んだ途端

サエを押し倒す等


まさか、そんな事はないと思い込んでいたサエは驚き

身を固くするが、僅かな抵抗など受け入れられず

簡単にベッドに組み敷かれる


「…!…」


次の瞬間、気がついた時には口唇を塞がれていた


流されるように服を脱がされ、成す術もなく熱い愛撫に耐えるサエ

ブラのホックを外され、ついに上半身が露になり、手はシーツに縫い付けられる

すべてを委ね、瞳を閉じた…


だが、そんなサエを見下すように、フッと笑う等


不思議に思い、チラッと目を開けると

今までにない表情でニヤついている等


「…お前さあ…なんでこんな所まで、ついてきちゃうの?」


あまりの事に、目をパチクリして固まるサエ




「雰囲気に酔って、流されまくり。

お前さあ、ホントは誠が好きなんじゃねーの?」


「…!…//////」


ハッとして、起き上がろうとしても

組み敷かれたままで、抜け出す事もできない


「…タイムオーバー。一日限りとはいえ、デートだしな…」


夢心地でキスされた時とは一転

最悪で羞恥心に苛まれながら、抵抗できないサエを嘲笑うように

ゆっくりと舌を這わせる等


快感の波に責め立てられ、何もかもがどうでも良くなるくらい

その身を捩り、喘ぎ声を上げ続けるサエ


………

すべての事を終え、目覚めた時

一糸纏わぬ姿で等の腕の中にいた




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