梅の暗躍
- RICOH RICOH
- 3月3日
- 読了時間: 3分
ちょうどその頃、
遥か天空の彼方。異次元に存在する魔界では
ちょっとした騒ぎになっていた
鬱蒼とした森の中
文化局に併設する魔界病院で、雷神界の皇太子ラァードル殿下が
秘密裏の改造手術を行っていた
ダンケルやイザマーレ、最高魔族の構成員たち、リリエルも見守る中
施術は順調に終わり、一時入院の為に身の回りの必需品を用意しようと
元老院に戻ったスプネリア
その時、枢密院でミルに出くわし、思わぬことを聞かされた
「スプネリア様!!大変です。お子様たちが…」
「え…?」
キョトンとするスプネリアに、歯痒そうに地団駄を踏むミル
「貴女様が大切になさっている、双子のお人形ですよ!!」
「…ああ、ひょっとして杏子と一檎ですか?それがどうかしましたか?」
「いつの間にか、姿が見えないんですよ」
「え?…でも…あの子たちが勝手に動くはずないですよね?人形ですから」
「もう!貴女様はご存じないのです。お人形にも魂は宿るのですよ?
自由闊達に遊びまわりますし、おしゃべりもするんです!!
いつもはおりこうさんで、おとなしくしてますが、どうやら…
居なくなってしまったみたいで…💦」
ミルの形相に面食らいながら、多少慌てて部屋の中を確認しに行く
「…!! 壱蛍…!」
部屋の中は、なぜか梅の香りが充満していて
壱蛍は居眠りしているようだった
「…ハッ…! あれ、スプネリア様??」
「壱蛍!!大丈夫?」
「!!!な…なんてこと…申し訳ありません…
御二方とも可愛らしく遊んでらっしゃって…
急に懐かしい香りがしたと思った途端…」
青褪めて、屋内を隈なく探し回るが見当たらない
(…ククク…)
ふいに、女性の笑い声が聞こえた気がした
ハッとして、立ちすくむスプネリア
「…た、たいへん…どうしよう…!!!お人形だけど…
殿下から貰った、大切な宝物なんです💦💦」
「…と、とりあえず…副大魔王様たちに、早急にお伝えしましょう!!
私にお任せください。スプネリア様は、お部屋の中でお待ちくださいね?」
ガクガクと震えながらも、なんとか頷くスプネリア
ミルはすぐに目玉蝙蝠を飛ばした…
一報を受け、すぐに現れるイザマーレたち
「スプネリア様!…大丈夫?」
リリエルが駆け寄るが、スプネリアは恐々と震えるだけだ
「…梅だって…?それは確かなのか?ミル」
「…ええ。私もあの声を聞きました。まさかとは思ったのですが…」
小声で確認するイザマーレに、ミルは恐縮しながら
リリエルを心配そうに見つめる
「…リリエルは、吾輩とずっと一緒に居た。
スプネリアの人形たちを連れ出した犯人は別にいる」
「…え?どういう事ですか?」
イザマーレの言葉に、キョトンと首を傾げるリリエル
「…梅の木に宿る…あいつが居たのは間違いないだろう。
しかし何故、今になって動き出したのか…」
リリエルの髪を撫でながら、思案するイザマーレ
その時、背後から声がした
「…理由もなく、このような真似はなさいません。
あの御方はむしろ、お子様方が進む先を見守っておられるのです」
「!…紫雲様…」
驚き振り返ると、壱蛍から報せを受けて
急遽降臨した紫雲が、人型に姿を変えて立っていた
そして、手にした魔鏡に地上の様子を映し出す

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