Ⅰ
- RICOH RICOH
- 2024年12月9日
- 読了時間: 3分
学園…
講義が始まり、学生たちは皆、ノートに書き留めたり
参考書を見て手元の動作を確認したりしている
その中で、異質なオーラを纏う少女が一名
肩まで切り揃えた黒髪をひとつに縛り
真っ黒なワンピース姿。
そこに、ねじ曲がった杖でもあれば、童話に出てくる魔女に
そっくり…かもしれない
だが、残念なことに彼女は魔女ではない
成績も決して優秀とは言えないし、
やる気があるのかと問い詰めれば、
はっきり「No」と答えるに違いない
中央の席に座ったのは、特に意味はない
そこしか空いていなかったのだ
言葉も、黒板に書かれる文字の意味も
興味を惹かれるものではないし、退屈極まりない
眠気覚ましに何度目かの大きな欠伸をしながら
また、ぼんやりと考え始める
ここ最近、何度も繰り返し見る夢の事を…
………
見たこともない大きな扉の前で、開けるのを躊躇い戸惑っている自分
すると突然、自然に扉が開き、中に居た女性がゆっくりと振り返る
「…待ってたよ。早く、戻っておいで……」
引かれた手の温もりに、とてつもなく懐かしさを覚え、
躊躇いながらも足を踏み入れる…
「…そろそろ時間だな。ここまでの所、よくおさらいしておくように。
試験に出るぞ。」
「は~い♪♪」
講義をしていた先生の声に、学生たちは一斉に応え
ノートを取り始める
それでも彼女は、ぼ~っとしたまま微動だにしない
素知らぬフリをしながら心眼で覗き込むと、
相変わらず夢前案内の奥深くで旅の真っ最中のようだ
「………」
ため息をつきながら、そっと近づいて彼女の肩に手を置く
「授業中に、何を考えているんだ?」
「…//////」
驚きのあまり、びくっとして振り返る彼女に、先生は眉間に皺を寄せ
怪訝そうな表情を浮かべる
「…思い出したのか?ラディア」
「…!…」
耳元で囁く先生の声に、数多の記憶が走馬灯のように駆け巡る
憎悪…恐怖…そして………
突然目の前がぐにゃりとして、ラディアはそのまま倒れ込む
パンデモニウム宮殿で起きたシグナス事件の後
北の界隈はおろか、王都中に彼女の存在が知れ渡った
その余波で商店街で働いていても、好奇の視線に晒される
煩わしく、鬱陶しく、本当に勘弁してほしい…
ますます居心地の悪さを感じていたところに
思わぬ人物(いや悪魔)から招待状を貰ったのだ
魔界高等専門学校の学園長からだ
シグナスという悪害を駆逐し、最高魔族の意識を覚醒させた事
その感謝の意をもって、自らが運営する学園に特別枠で編入させるとの事
イザマーレ会長とAnye、並びに各構成員たちも皆、
揃って卒業となり、定員にも余裕がある
校舎という柵により、ゴシップからも守られるだろう、という配慮もあった
断る理由を探すのも面倒だ
かつてAnyeが通っていた学園とあれば、多少なりとも興味がある。
そんなミーハー心も相まって、ラディアは二つ返事で受け入れた
だが、学園に通い始めたラディアは、すぐに自らの選択を後悔した
校舎のそこかしこに残る、イザマーレとAnyeの残り香…
やれ、ここがいつも待ち合わせていた掲示板だの
2魔がいつも居た生徒会室だの
学園内でも大人気だった2魔の噂は、消えるどころか
今や、伝説のヒーロー&ヒロイン扱いだ
ウンザリするが、ラディア自身に対する興味本位な噂話ではない事に
どうにかホッとする
そんなこんなで、学園に通う日々にも慣れてきた頃から
毎晩のように同じ夢を見るようになったのだ
コメント