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Ⅱ そろそろ見たいもの

  • 執筆者の写真: RICOH RICOH
    RICOH RICOH
  • 1月1日
  • 読了時間: 3分

タワマンARCADIAの一室


玄関の扉を開けると、ふき抜けの広いフロア

突き当りで左右に分かれ、左は専用のプライベート居室、

右はプロダクションの事務所として機能させている


生き血祭りを回避させた70年という歳月を経て

今また、馴染みの深いこの時代に帰化しているにも関わらず、

少しも色褪せる事のない想い…


…どちらがより強く、愛し続けるか…そんな毎日にしていかないか?…


その誓いは、あろうことか今も、無限に続いているのだ


…かつて、魔界で暮らしていた時も、学園内と屋敷で

オンオフをきっちりと分けていた習性で、事務所にいる時間は

かつての生徒会の時ように、こき使われる毎日だ


「…花。次回の会報に載せる記事はまとまったか?」


「あ、はい。先日のフェスの現地レポ、亮さんのドラマの様子

あとは、アルバムの紹介など…画像は蓮さん経由で

ベルデ様にお願いしているところです」


「よし。マネージャーやスタッフからの報告で、なにか問題は?」


「そうですね…百花さんから届いてます。

相変わらず丁寧で、几帳面な彼女らしいです(*´艸`*)

亮さん、今のところ、順調に撮影が進んでいるようですね。

ただ…」


「ん?」




「タイトなスケジュールで、なかなか休暇が取れず

咲音さんと時間が合わせづらい、という事と…」


百花らしいユニークな文面も省略することなく

律義に報告する花に、笑みを浮かべて先を促す光


「…庵野 寛子の事務所の人間は、マネジメントもずさんで

あまり機能していないようだ…との事です」


そこまで読み上げて書類を裏返し、ふぅっと息を吐く花


「(苦笑)…はいはい。庵野サイドのことで

機嫌を損ねないでくれ。それより、勤怠ファイルを見せろ」


むぅ、と頬をふくらませつつ、言われた通り

所属アーティストの勤怠記録のファイルを立ち上げる花

そのファイルは、連続勤務時間と休暇のバランスが

ひと目で分かるグラフ形式になっている


「…まあ、そうは言っても、つい先日あいつらの計らいで

じゅうぶん鋭気を養えたはずだろう。亮以外の、他のメンバーたちとの

バランスもあるしな」


「…そうですね」


気を取り直し、微笑む花を見つめ、頬にキスをする光


「…///光さん…///」


恥ずかしそうに真っ赤に染まり、ギュッと目を瞑る花


「自分で機嫌を直した良い子には、褒美をやる。おいで…」


そのまま手を取り、左側の居室に向かう




梅雨の曇天だが、室内は静かで

常にほのかな明かりが灯されている


花をベッドに横たえ、見つめ合う

ゆっくりと口唇を重ね、一枚ずつ衣服を脱がしていく…


一番最初は、敵対していた

まどろっこしい追いかけっこの最中には

無理やり身体を奪った事もあった


どちらかといえば泣き顔やふくれっ面のお前の方が

見慣れているかもしれない


それでも、Anye…


鍵を閉ざした心の奥で、満開の笑顔を咲かせる事を

吾輩は知っている


「花…悦ぶお前の声…もっと聞かせろ…」


顔を埋め、甘い蜜を舌で吸い尽くす光に

溜まらず身体を捩らせる花


「…あぁんっ…光さ…い…イザマーレさまあぁぁ…っ…」


ちなみに……


この2人(2魔)の場合、光は扉を消さない

解き放たれる花(Anye)のオーラで、新しい扉が出現するのを

楽しむためだ


魔界から届いた資料を手に、玄関前のフロアで佇む

蓮が入室できるまで、当分かかりそうだ……





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