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レコーディングスタジオ

  • 執筆者の写真: RICOH RICOH
    RICOH RICOH
  • 3月25日
  • 読了時間: 5分

「あ、百花さん。お待ちしてました。どうぞこちらに…」

 

花が出迎えて、奥のミーティングルームに向うと

光と蓮、それに亮と匡輝が同席していた

 

「…お待たせしました。」

 

百花は軽く会釈すると、手前の椅子に座る

すぐ近くに花が座り、百花のCDと何枚かの書類を差し出した

 

「百花さんのデビューコンサートが決まったわ。おめでとう。」

 

「…あ! ありがとうございます!」

 

書類を受け取り、要綱を確認する百花

 

 

「小規模なホールだけど…百花さんの歌声にはピッタリだと思うの。

素敵な時間になるよう、私たちもサポートします。頑張りましょうね♪」

 

「////はい。よろしくお願いします////」

 

さすがに気分が高揚し、背筋を正し、深くお辞儀する百花

 

花はいつものように優しく微笑んでいる

 

「そこでだ、百花ちゃん。我々、光プロダクションのマネジメント体制も

再構築しなければならない時期に来ていると思ってね」

 

「…え…」

 

光の言葉にキョトンとする百花

 

「百花ちゃん自身の活動もあるのに

亮のマネージャーとして兼務させるのも、どうかと思うのだが…」

 

「………」

 

今の今まで思いつかなかった。

亮の付き人として、楽しくも学ぶことが多く、苦労に感じた事はなかったが

何せ、相手は事務所のトップスター。百花自身の活動を

進めていくにつれて、亮ほど激務な活動のマネジメントを両立させるのは

難しくなるのは必至だろう

 

「…亮ちゃんのマネージャーが足りなくなるんだな?

必要なら、俺の所にいるあいつを戻してやってもいいんだが」

 

ここまで黙って聞いていた匡輝が口を挟む

 

「…薔子か…」

ハッキリと口には出さないが、承諾しづらい亮

 

 

「でも…匡輝さんのところだって、必要でしょう?

薔子ちゃんはやっと落ち着いた感じだし…」

 

うーむ、と考え込む光と蓮

花も煮え切らない様子で首を傾げる

 

「俺は要らねーよ。あいつ、うるせーし。

他の誰かにするなら、桜介がいいな」

 

案外と容赦なくばっさりと切り捨てる匡輝

 

「桜介か…ただ、彼はレコショップのオーナーとして

我々を最大限にバックアップしてくれている。

闇雲に引っ張るより、適材適所で活躍してくれる方が

助かるよな」

 

「この際、庵野を引っ張るか?あいつ、最近じゃすっかり

鳴りを潜めているが…百花にとっては良いスパイスになるかもしれんが」

 

「…たしかに…」

 

花と百花は納得しかけるが、

「絶対に嫌だね💢」

今度は亮が猛反発する

 

「…亮のマネージャーとして、やはり百花ちゃんほどの適任はいないし

これまで本当に色々な面で我々も助けられた。感謝しているよ。

だからこそ、百花ちゃんのこともしっかりとサポートさせて欲しいと思っている」

 

ここまでの総括を語る光に、百花は素直に感謝する

 

「…ありがとうございます。ただ、メジャーシーンで活躍される亮さんに比べて

私はもう少し、ゆったりめの活動ですし、セルフマネジメントでも大丈夫かな、と

思ってますが…」

 

 

「…そうね。百花さんなら、その点は心配要らないと思うわ。

でも、マネジメントにはスケジュールや勤怠管理だけでなく

百花さん自身のケアや護身という意味合いも含まれているの。

アーティスト自身の安全のためにね」

 

「…百花ちゃんのサポートを怠ったりしたら、師匠の倉ちゃんに

我々が叱られるだろうからな♪」

 

「…はあ…(^-^;」

 

「もし、百花さんが了承してくれるのなら、暫くの間は今の体制のままで

ただ、百花さんが大変な時のための補欠要員として、亮さんにもう1人

つけるのはどうかしら…普段は百花さんの用心棒として動いてもらうっていうのは…」

 

「そうだな…マネジメントの人材を育てる意味でも、有効な方法だな

百花になら、任せられると思う」

 

花の提案に、亮も前向きに意見を述べる

 

「それにしても、まっさんは良いよな。自由気ままで…

俺もそんな感じで良いような気がするけど

倉ちゃんだって、マネジメントついてないだろ?」

 

「馬鹿野郎。倉ちゃんのマネジメントは会長の光だ。

顔を伏せて活動をする匡輝と、国民的トップスターの亮とでは

マネージャーに問われる力量も比べようがない」

 

自由奔放に言い放つ亮の言葉に

思わず𠮟りつけながら、言いくるめる蓮

 

「では…仕方ありませんね。しばらくの間、私がサポートに入りましょう。

百花さんのアシスタントも、引き受けます。よろしいかしら?」

 

花の言葉に、亮はさすがに何も言わない

 

 

「も、もちろんです。身に余る光栄です」

 

百花も納得しかけたが、どうも不満そうな様子の光

 

「…多くの人間どものオーラに触れることになるぞ。花ひとりで大丈夫か?」

 

「あら♪こき使われる事には慣れてますよ♪」

 

「…それなら俺が…」と言いかけた光に

「お前が出て行けば、俺が護衛に行かねばならんだろう」

と、すかさずツッコミを入れる蓮

 

「「「…ふ~む………………」」」

 

まさしく、船頭多くして船山に上る状態

議題は暗礁に乗り、結論は先延ばしになった

 

百花も困り果てるが、さすがに自分の力では

どうすることもできない

 

そこへ、匡輝が話しかけてきた

 

「おめでとう。コンサート、見に行くからね」

 

「あ、ありがとうございます!頑張りますね♪」

 

………………

 

小さな武者震いと共に、百花の歌声が止み

絵物語もそこで終わった



 

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丸太小屋の階段を降りると辿り着く桜の木
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